不動産会社の強みとは?宅建・発信・セミナーが業界の「圧倒的差」になる理由
不動産業界において、「他社との差別化」や「永続的な成長」を遂げるためには何が必要でしょうか。価格競争や目先の利益ばかりを追い求めるビジネスモデルが限界を迎える中、独自の強みを築き上げて急成長を遂げている企業があります。
本コラムでは、世界最大級の不動産ネットワーク「センチュリー21」の賃貸部門において、15年連続ナンバーワンという驚異的な実績を誇る「センチュリー21 マルヨシ」の代表取締役・小山氏のインタビューを基に構成。
足踏みしていた10億円以下の売上から、27億5,000万円へと一気にスケールアップさせた経営戦略の裏側を公開します。お客様に選ばれるための「資格保有の重要性」、信頼をストックする「情報発信とセミナー」、そしてスタッフが生き生きと働く「チームワーク重視の組織づくり」まで、これからの不動産経営のヒントが凝縮されたビジネス論をお届けします。
1. 異業種から始まった37年の軌跡と「大躍進」の背景
「仕事嫌い」から不動産業界への転身、センチュリー21との出会い
マルヨシの代表を務める小山氏は、1950年12月生まれ。自嘲気味に「後期高齢者の入りになってしまう」と語りながらも、今なお現役の経営者として組織を牽引しています。
そんな小山氏ですが、学生時代は「就職しないで一生食っていける方法はないか」と真剣に考え、会社選びの基準も「休みが多くて残業が少ないこと」だったと明かします。最初に就職したのは流通大手の長崎屋でしたが、業績が右肩下がりになったことをきっかけに、知人の縁で不動産業界(当時のマルヨシ住宅センター)へ飛び込みました。
その後、テレビで「センチュリー21」の日本上陸とフランチャイズ導入を知った小山氏は、当時の社長に「ぜひ加盟しましょう」と直訴。1988年8月に自身が独立した際も、「間違いなくセンチュリーに加盟するんだ」と決意し、現在のマルヨシの基盤を築きました。今では37期目を迎え、賃貸部門で15年連続日本一という絶対的な地位を確立しています。
売上10億の壁を突破し「27億5,000万円」へ急成長した舵取り
マルヨシは長年、売上高10億円以下のところで約10年間ほど足踏みをしていました。しかし、ここ5〜6年でその状況は一変します。
それまでメインとしていた「賃貸」の強みを活かしつつ、主軸を「売買の仲介」や「買取再販」へと大胆にシフト。この事業構造の変革が功を奏し、売上は12億、15億、20億と瞬く間に増加し、一昨年には27億5,000万円という過去最高の発行数(売上)を記録するまでに成長を遂げました。
2. 独自の強み①:なぜ「資格保有者」の多さが圧倒的な差別化になるのか
小山氏が語る、一般的な不動産会社とマルヨシを分ける最大の要因の一つが、「資格保有者(特に宅地建物取引士など)の圧倒的な多さ」です。
お客様は「外観・外見・肩書き」で無意識に判断している
「お客様というのは、最初の段階において『外観や外見』で会社や担当者を判断するものだと私は思っています。見た目や店構えはもちろん、保有している『資格』や『肩書き』というデータを見て、無意識のうちに信頼できるかどうかをジャッジしているんです」
どれだけ「私たちは誠実です」と口頭でアピールしても、客観的な証明がなければお客様の不安は拭えません。だからこそ、社内の有資格者を1人でも多く増やすことが、そのまま会社のパワーになり、競合他社に対する大きなアドバンテージになると小山氏は確信しています。
毎朝8時からの勉強会:仲間全員で合格を目指す「三宅塾」
資格取得を会社として強力に支援するため、マルヨシでは今年から新たな取り組みをスタートさせました。社内メンバーの「三宅氏」が講師となり、毎朝8時から9時までの1時間、全員で宅建合格に向けた勉強会を行っているのです。
業務前の朝早い時間であるにもかかわらず、遅刻者やドタキャンは1人も出ず、全員が皆勤で参加。開始してわずか10日ほどで、スタッフからは「やり始めて本当に良かった」「ぜひこのまま継続してください」と驚くほど前向きな声が上がっています。小山氏は、10月の本試験に向けて「このペースなら、挑戦する8人全員が合格してくれるのではないか」と強い手応えを感じています。
資格はゴールではない。お客様の「資産最適化」を叶えるパートナーへの手段
ここで重要なのは、マルヨシにおける資格の捉え方です。小山氏は「資格を取るために勉強するのではない」と断言します。
- 資格を持つ真の意味
- 資格は、お客様により良いサービスと提案をするための「1つの手段」に過ぎない
- 確かな知識を持つことで 初めて、お客様に対して生意気ながらもプロとしての正しいアドバイスができるようになる
「私たちは、お客様に対して単なる『雇用関係』や『業者と客』という立場でいたくありません。お客様と共に歩み、お客様の持つ資産の最適化・最大化を目指す『良きパートナー』でありたいんです」
人間性が良くて「いい人だね」と言われるだけでなく、「このプロにすべてを託したい、お願いしたい」と思ってもらえる自分になるために、マルヨシのスタッフは日々勉強を重ね、知識のアップデートを続けています。
3. 独自の強み②:「目先の利益」を排した情報発信とセミナー戦略
不動産会社が自社でセミナーを開催したり、情報誌を発行したりするケースは増えていますが、その多くが「顧客の囲い込み」や「営業案件の獲得」という下心を伴っています。しかし、マルヨシの戦略はその真逆をいきます。
大家さんの駆け込み寺:敷居の低い「相続・不動産活用セミナー」
賃貸管理ビジネスを長年展開していると、年に何人かの家主(オーナー)様が亡くなるという場面に必ず直面します。小山氏は「残されたご家族が円満に相続を迎えてほしい。そのためにマルヨシとしてできるお手伝いは何か」という純粋な想いから、自社セミナーをスタートさせました。
特徴的なのは、どこかの偉い弁護士や税理士を呼んで難しく話してもらうのではなく、「社長である小山氏自らが教壇に立って直接語りかける」という点です。
「どこかの高名な先生がやるセミナーではなく、いつも顔を合わせている私がお話しさせていただく。だからこそ、オーナー様にとっても圧倒的に『敷居が低く、聞きやすい・相談しやすい環境』を作ることができるんです」
スタート当初から既存の大家様が多数押し寄せ、現在にいたるまで動員や集客で苦労したことは一度もありません。小山氏は「目先の商売(利益)はあんまり考えていない。『商売がしたい、したい』という下心でセミナーをやっていたら、きっとここまで続いていないし、お客様もどんどん離れていったはずだ」と振り返ります。
他社との差別化を決定づけた自社メディア『マルヨシ通信』の誕生
かつてマルヨシでは、外部の専門業者が作成した有料の「オーナー向け通信」を購入し、大家様へ配布していました。しかしある時、オーナー様から突きつけられた一言が小山氏に衝撃を与えます。
「小山さん、これと全く同じオーナー通信が、他の不動産会社からも届いていますよ。これじゃ御社の差別化になっていませんよね」
この失敗を猛省した小山氏は、すぐに外部媒体への依存を止め、自社の思いや独自のノウハウを詰め込んだ完全オリジナルの『マルヨシ通信』を発行し始めました。ここでも「商売に繋げよう」という営業的な目線は一切排除し、たった1人のオーナー様にでも喜んでもらえる情報を発信することだけに特化しました。
結果として、この実直な情報発信はオーナー様だけでなく、地域の税理士などの専門家からも「素晴らしい情報だ」とお礼の手紙や電話が届くほどの信頼ストックとなり、目先の利益を超えた強力なブランド力へと昇華しています。
4. 独自の強み③:チームワークを爆発させる社内教育と透明性の高い情報共有
「会社というのは、まさしくチームワークである」と小山氏は語ります。個人のマンパワーに依存せず、組織全体を1つの強いチームにするための仕組みがマルヨシには存在します。
役職や職種を超えた社内教育:社長自らが教える「哲夫塾」
マルヨシでは、多層的な社内教育システムを構築しています。
- 哲夫塾:入社1〜2年目の新人・中堅向けに、小山代表自らが会社の経営方針や考え方を直接叩き込む年次研修
- 外部講師研修: 幹部候補となる中堅社員を対象に、時期やタイミングを見計らって専門の講師を招致して実施
「黒衣(裏方)」のスタッフにこそスポットライトを当てる
営業組織において、売上数字を派手に上げる営業パーソンばかりが目立ちがちです。しかし小山氏は、「営業ではない、経理や事務サポートといった『黒衣(裏方)』の人たちにこそ、全員の前でスポットライトを当てるべきだ」という強いこだわりを持っています。
「誰だって、自分の仕事を認められて褒められるのは最高に嬉しいじゃないですか。全社員が集まる全体会議の場で、裏方のスタッフの頑張りを発表し、表彰する。この機会があるからこそ、会社全体の帰属意識とモチベーションが高まり、『もっと会社のために頑張ろう』という一体感が生まれるんです」
他人事を無くす「平等・公平な情報発信」と、仕組み改革への共鳴
月1回の全体会議では、あえて自分の部門とは全く関係のない他部門の売上推移や業績の上下についても、全員に細かく共有されます。
「そんな話をしても、一般の社員には伝わらないのでは?」という懸念に対し、小山氏はこう反論します。
「情報が共有されていないと、人はどうしてもその物事を『他人事』として見てしまう。大切なのは、会社がみんなに対して平等・公平に情報を発信しているという事実そのものです。受け止め方は人それぞれでいい。そのオープンな姿勢が1人、2人と伝わっていけば、いつの間にか全員に会社のベクトルが浸透していくんです」
実際に先月、マルヨシでは社内の仕組みとやり方を大幅に変更しました。小山氏は「みんなのモチベーションが下がらないか」と非常に心配していましたが、蓋を開けてみれば、業績は前年同期比で10%以上もアップ。スタッフたちからも生き生きとした表情で「社長、この新しい仕組み、すごくいいですよ!これからもぜひ続けてください」と共鳴の声が上がりました。手を取り合い、同じ方向を向いて走るチームワークこそが、マルヨシの成長の絶対的な確信となっています。
5. 【採用・福利厚生】1人も辞めない会社を作る「リアル体験」と先進的な働き方
多くの会社が「いかに儲けるか」という色合いを前面に出して求人を行う中、マルヨシの採用と福利厚生に対するスタンスは極めて先進的です。
ギャップをゼロにする「1日実務同行体験」と内定者アルバイト
「美味しいこと(条件面など)ばかりを伝えて学生を採用しても、入社後のギャップで不幸せになるだけだ」と小山氏は言います。
そのためマルヨシでは、選考を進んできた学生に対して、朝9時半から夕方6時まで、実際の営業活動に丸1日密着・同行させる「1日実務体験」を導入しています。
参加した学生たちからは「ここまで生のリアルな仕事を隠さず教えてくれる会社は他になかった」と感動の声が上がります。
さらに、内定を出した学生には、強制ではないものの週に2〜3日の「内定者アルバイト」としての勤務を推奨。入社前に社員と全く同じ実務を経験し、先輩たちと馴染んでいるため、入社後のギャップがほぼゼロになります。昨年などは、内定者の段階で社員旅行に一緒に連れて行ってしまったほどです(笑)。この徹底した透明性により、昨年1年間、マルヨシでは中途・新卒を含めて退職者が「1人も出ない」という驚異の定着率を誇っています。
元パーソナルトレーナーの社員が教える「社内ジム」と「出張予防接種」
マルヨシの福利厚生は、ユニークかつ実用的です。
「健康維持のためにジムに通いたいけれど、わざわざ行くのは面倒だしお金もかかる」というスタッフの声に応え、なんと本社ビル内に専用のトレーニングジムを完備。さらに、昨年中途で入社してきたメンバーの「中川氏」が元パーソナルトレーナーだったことから、現在は彼が無料で他の社員にパーソナルトレーニングを教えるという、大盛り上がりの社内コミュニティが誕生しています。
また、インフルエンザの予防接種の時期には、病院へ行くと半日〜1日仕事になってしまうため、小山氏が親しい医師を会社へ招致。「学校の集団予防接種」のように、社内でサッと全員が接種できる仕組みを作って面白がっています。
「有給取得率8割以上」を推奨:1週間の連休が生産性を上げる
今年、小山氏が特に注力しているのが「有給休暇取得率を8割以上にする」という目標です。それも、1日ずつバラバラに取る「虫食い」の取り方ではなく、最低でも5日、あるいは1週間の連続休暇を取ることを強く推奨しています。
「1週間も10日も担当者が会社を休むとなったら、『お客様に絶対に迷惑をかけないために、どうやってチームで仕事を回すか』を全員が必死に考えるようになります。この仕組みを整えることこそが、個人の属人化を防ぎ、結果的に組織の生産性を爆発的に引き上げることに繋がるんです」
かつての小山氏は、「8時半には会社に来い」と早出を強要したり、夜の9時・10時まで働くのは当たり前だという猛烈な働き方をさせていました。しかし、コロナ禍を経て「9時半〜18時半」の定時退社を徹底し、労働時間を大幅に短縮した今の方が、皮肉にも会社の業績は一切落ちず、むしろ伸び続けています。「しっかり休んでリフレッシュした方が、中身の濃い、圧倒的に生産性の高い仕事ができる」というのが、長年の経営の末に小山氏がたどり着いた真実です。
6. まとめ:私たちが目指す、これからの不動産経営のあり方
本インタビューを通じて、15年連続日本一の「センチュリー21 マルヨシ」を率いる小山哲夫氏が示した、これからの時代を勝ち抜くための経営マインドは以下の3点に集約されます。
- 資格と知識は「お客様と共に歩むための最強の盾」である
単なる記号としての資格ではなく、お客様の「資産の最適化・最大化」という共通のゴールへ向かう良きパートナーであるために、組織全員で学び続けるカルチャーを作ること。
- 「目先の利益」を捨てた発信こそが、最大の信頼をストックする
下心のある営業用セミナーや他社の真似事の情報誌を廃し、社長自らの声による敷居の低いセミナーや、徹底的なお悩み解決に特化した自社メディアを発信し続けることが、永続的なファンを作る。
- 仕事の本当のやりがいを伝え、選ばれる会社になること
条件面だけの採用を止め、1日密着などの「リアルな仕事の喜び」を泥臭く伝えることで、離職ゼロの強い絆を持ったチーム(組織)が誕生する。
「仕事が面白くなくて、ただ朝から晩までロボットのように働くだけの人生なんて面白くないじゃないですか。仕事を通して様々な価値観を受け入れ、それをバネに人間として成長していく。そして、お客様から『あなたがいなかったら今の私はないよ』と言っていただける。これほど幸せなことはありません。マルヨシを、そんな熱い人材が集まる最高の会社にしていきたいですね」
74歳を超えてなお、凄まじいスピードと熱量で組織をアップデートし続ける小山氏の経営論には、これからの時代を生き抜くすべての企業にとって、重要な本質が刻まれていました。
今回の小山代表による、宅建サポートの裏側やフランチャイズ(センチュリー21)の本音、そして仕事を楽しむための熱い経営哲学をより深く動画で体感されたい方は、ぜひこちらのリンクから直接ご覧ください。



